当院で可能な検査
エコー検査
エコー検査とは、超音波断層検査とも呼び、超音波(超音波:4MHz~15MHz、通常聞こえる範囲:20MHz~20KHz)を用いて体内の断層像を見て診断するものです。原理は魚群探知機と同じで、プローブから発せられる超音波が、身体内で反射し、戻ってきた音波を検知することで内部の状態を映像化します。
臨床に導入されてからすでに40年近く経過しますが、機器の進歩に伴って鮮明な画像がえられるようになっています。また、小型化もすすんで、診療所レベルでも高度な診断ができるようになりました。また、血液の流れが見えるドップラーエコーを用いると、動脈硬化や血流低下、腫瘍の鑑別などの評価ができ、診断の能力が向上すると言われています。
エコーの良いところは、体に負担がほとんど無く、見ている前で診断がつくことです。放射線を用いるCTや超磁場を用いるMRIでは、結果を確認するのに放射線科の医師の読影が必要であり、時間が必要です。また、放射線被曝などがあるので、何回も続けて検査することはできません。またこのような施設がある大病院まで出向かなくてはなりません。一方で、診療所のエコーであれば見ている前で結論が出て、わからないことがあればその場で針を刺して診断をすることもできます。あるいは、溜まっている水を抜いたり、悪いところに注射したりすることもできます。
一方で、エコー検査には限界もあります。体内に超音波が通りにくい空気や骨、厚い脂肪組織などがあると、邪魔されてその周囲や奥の様子がわかりにくくなります。体型によって、影になる部位ができることもあります。時に、アーチファクトと呼ばれる画像処理上の効果のために、実際にはないものがあるように見えたりします。また、胃や大腸のような空気が入る管状の臓器の評価も苦手です。
では、どのような部分の病気の診断に役に立つのでしょうか。
- 表在臓器
- 甲状腺、乳腺、頸部や鼠径部のリンパ節などの炎症、腫れ、腫瘍など、脱腸などのヘルニアを診断できます。
- 腹部臓器
- 肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、膀胱、前立腺、子宮、腹部大動脈など。 脂肪肝や胆石、腎結石、良性腫瘤や悪性腫瘤(ガン)、動脈瘤など、様々な疾患を発見することができます。腹部の打撲の時にも有用です。
- 心臓
- 大きさ、筋肉の動き、弁の状態を観察し、心筋梗塞や心臓肥大、弁膜症や先天性疾患の有無、心不全の程度などがわかります。
- 血管系
- 動脈瘤、動脈硬化、下肢静脈瘤など。頚動脈では、視覚的に動脈硬化の診断ができます。動脈硬化を起こすと、血管壁が厚くなったり、硬くなったりします。さらに進行すると、血管がつまってしまいます。そのような血管の状態を、直接観察できます。
- 運動器
- 肩や膝、腰などの整形外科領域でも、外傷や痛み、炎症の診断に有用です。直接見ながら、痛いところに注射することもできます。
腹部の場合には、食事をしないほうが良い条件となりますので、絶食でいらしてください。水分は摂取して大丈夫です。また、超音波は液体を良く通すため、膀胱などの下腹部を検査する場合は、膀胱に尿を溜めた状態のほうが良く観察することができます。検査直前の排尿はご辛抱ください。
血管脈波測定
動脈硬化とは
血管は年齢とともに徐々に柔軟さを失い、硬くなっていきます。これを動脈硬化といいます。血管の壁を作っているたんぱく質が変化したり、血管の壁の中にコレステロールなどが沈着することが原因です。高血圧や高脂血症、糖尿病などの血管の傷みがすすみやすい病気では、その進行が速いといわれます。また、個人差もあり同じ年齢でも動脈硬化の程度はさまざまです。
動脈硬化からくる疾患
動脈硬化が進むとどうなるのでしょうか。まず血流が不安定になるので、虚血の症状が出やすくなります。特に下肢(足)は心臓から遠いので、ひどく冷えたり、歩くと痛みが出たりします(閉塞性動脈硬化症)。また、血管の壁が凸凹になるため、局所に血の塊(血栓)ができやすくなります。脳や心臓の血管に血栓ができて詰まると、血流が途絶えて脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。急に起こるように見える脳梗塞や心筋梗塞ですが、実は日頃から動脈硬化が徐々に進んだ結果起こるのです。また、血管壁が弱くなった結果、逆に拡張して動脈瘤を作ることもあります。動脈瘤は破裂すると致死的な出血をきたします。一旦動脈硬化をきたした血管は元に戻ることはなく、予防が重要です。
動脈硬化の調べ方
では、外から見えない動脈硬化の状態を知るにはどうしたらよいのでしょうか。
- 1)危険因子
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動脈硬化の危険因子として以下が挙げられており、要因のある方は注意が必要です。
- 高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
- 喫煙歴
- 高尿酸血症
- 肥満
- 2)診察
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- 血圧
- 脈の触診
- 下肢の虚血
- 腹部の触診など
- 3)検査
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動脈硬化の程度を知る検査には以下のような方法があります。
- 心電図検査
- 眼底検査(眼科で調べます)
- 上腕動脈と足関節上部で測定する血圧の比、脈拍の触れ方、左右差
- エコー検査:頸動脈、大動脈、下肢動脈などのエコー検査は動脈硬化の程度が画像で診断可能です。ドップラー法で血流の速度なども評価できます。
- 脈波分析:掲載の器械を用いて以下の項目の測定ができます。それによって、動脈硬化の程度を評価し血管年齢などもわかります。
- CAVI(cardio-ankle vascular index):9.0以上の場合動脈硬化と考えられます。
- baPWV(brachial-ankle pulse wave velocity)(上腕-足首間脈波伝播速度)
- ABI(足首上腕血圧比):0.90 以下の場合には、なんらかの狭窄または閉塞性病変が疑われます。
動脈硬化の可能性がある方は、定期的に評価されると良いと思います。
レントゲン撮影
レントゲン検査とは、波長の極めて短い光であるX線を用いて、体内の状態を診断する画像検査です。その歴史は古く、ドイツのレントゲンが19世紀末に撮影法を考案して以来、120年間画像検査の主役です。X線は、体内を通り過ぎる途中で骨や臓器、組織に様々な程度に邪魔されます。通り抜けたX線を背面においたフィルムで受け止めると、体の内部の状態が映し出されます。ちなみに同じ原理を用いて3次元的に画像を作って診断するのが、大病院で行なっているCT(コンピューター断層撮影)検査です。
通常のレントゲン検査で得られる情報は2次元(平面)なので、立体である身体の状態がすべてわかるわけではありません。しかし痛みもなく迅速に体内の状態を評価できる検査ですので、依然として最も役に立つ検査の一つです。
レントゲン検査が得意な用途としては、外傷、骨折、肺炎、腸閉塞、心不全、肺水腫や腹膜炎などの診断があります。これらはいずれも重大な病気なので、迅速な判断が不可欠なのです。一方では、内臓の中にできる癌や、頭蓋骨の中にある脳の検査にはあまり適していません。
従来はX線フィルムを用いて撮影し、暗室で現像したフィルムを光にかざして診断を行っていましたが、デジタル化の流れに伴い、当院でもデジタル撮影装置を導入しました。従来のフィルム法と比較して、まず現像までの時間が早く、拡大や強調画像によって細かい診断しやすい事、以前の検査が容易に呼び出すことができて比較や経過観察しやすくなったことなど、多くの利点があります。デスク上の大きなモニタで表示されるので、ご病状の説明もわかりやすくなります。
血糖/ヘモグロビンA1c迅速検査
食生活の変化に伴って、糖尿病の患者さんは年々増加していると言われています。疾患のページでも説明していますが、糖尿病とは血糖が高くなって糖分の毒性で様々な臓器が傷んでくる病気です。主に血管が障害を受けるため、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全などをきたすことがあります。糖尿病の治療は、高血糖をできるだけ正常化することにより行います。食事療法、運動療法、薬物療法、インスリン療法などが行われますが、血糖値を目安にして治療の内容を決めていきます。しかし、血糖値は食事や活動により大きく変動するので、目安としては不安定です。そこで、もう少し長期的(約1〜2ヶ月間)な血糖値を反映するとされる“ヘモグロビンA1c”を目安としています。治療の目標値としては、一般的には7%以下に保つことを目標としていますが、個人によって異なる目標を決める場合もあります。
当院では、微量の血液からヘモグロビンA1cの迅速検査を行っており、糖尿病の血糖管理に役立てています。原則として、1ヶ月に一回ずつ測定しています。